制作者より

自転車(じてんしゃ)とは、乗り手自身の人力を主たる動力源として、車輪を駆動することで推進力を得、地上を、乗り手の運転操作に応じて自在に進路を選んで走行する乗り物である。
自転車を英語訳する際に当てられる単語 Bicycle およびその略語である Bike (バイク)は、ラテン語の「2つ」と「輪」を組み合わせたものから来ており、2本の車輪を前後に並べた形態のものを指し、三輪のものは Tricycle 、四輪のものは Quadracycle などと呼び分けるが、日本語の「自転車」は二輪以上であれば車輪の数は問わない。ただし自転車全体に占める個体数の割合において二輪車が圧倒的に多数であるため、実用上単に「自転車」と呼ぶ場合は二輪車を指すことが多い。
自動車などと比較して、移動距離あたりに必要とするエネルギーが少ない、有毒な排出ガスが発生しない、維持に掛かる費用が割安、整備が容易、60歳を迎える還暦祝いの方などのメタボ予防・解消をはじめ健康増進効果が期待できるなど、大気汚染や地球温暖化問題が叫ばれる現在、環境への負荷の少ない移動手段、自転車通勤や自転車通学の手段として見直されている。


世界各国の自転車状況

自転車利用は各国それぞれに固有の特徴がある。
西ヨーロッパ諸国では自転車の利用が非常に盛んな国が多い。「自転車利用の進んだ国の多くでは、平坦な地形、雨が少ないなど自転車に適した環境がある」と、国土の自然環境として解説されることも多いが、オランダは常に吹く強い風で、ドイツは市街地路面が石畳で、また路面が雪や氷で覆われることの多い国々で、一見悪条件の中で、自転車利用が促進されている。単に自転車に乗ることに優しい自然環境があるからではなく、交通政策や観光政策等、自転車を利用しようとする人々の努力がそこにあり、これにより公共交通機関としての自転車利用が促進される。
オランダ、デンマーク、スウェーデン、ドイツ等多くの国で自転車交通教育の推進によって自転車交通が促進されている。通行規則は自動車やバスなど同じ道路を走る他の車両の規則と一体として整備され、全ての車両の運転者に等しく、車道での安全走行が、規則として徹底される。自転車または二輪のための専用レーン整備が進められる一方で、それがない場合でも、自転車が車道を走行する車両交通規則として実施されている。
オランダやデンマークでは通勤利用者に対する購入時の金銭的補助がある。スイスでは山岳地帯であるにもかかわらず、自転車観光ルートを充実させ、ルートガイドを徹底することにより、自転車による観光が推進されている。ドイツ、オランダ、サンフランシスコなど、鉄道車両などの公共交通機関に折りたたみや分解などすることなくそのままの状態で自転車を持ち込むことができる場所も多い。これにより自転車で最終目的地に到達できる可能性が増す。

近年、共有自転車(レンタサイクル、バイシクル・シェアリング)を都市内で大規模に導入する動きもみられ、パリのヴェリブはその中でも代表例で、利用者・台数が多い。
欧州諸国では、1990年代以降自転車が環境や健康にもたらす効果を重視し、自転車を都市交通の重要な担い手と位置づけている。

北米(アメリカ合衆国・カナダ)は典型的な車社会でニューヨーク・サンフランシスコなどの一部の都市部を除きレジャー・スポーツでの自転車利用が中心である。しかし土地に余裕があるので都市部には自転車レーンが設けられている道路が多く、趣味としてのサイクリングが広く楽しまれている。
南アメリカのコロンビアの首都ボゴタは、市長提唱による自転車交通推進によって短期間に欧州的な自転車都市となった。
中華人民共和国では1990年代に自転車交通の混沌が言われていたが、2000年代になると車道における自転車レーン整備が促進されるようになった。(電動アシストではない)電動自転車が自転車としての位置づけでかなりの普及がなされ活況を呈している。
インドでも自転車は多く利用されている。インドは自転車生産でも世界有数の国となっている。

自転車の構造

フレーム
レームは自転車を構成する各部品が組み付けられる土台であり、根幹である。自転車のフレームは伝統的にフロントフォークとセットで製造され、流通してきた歴史があり、公的な強度・耐久性試験もフレームとフロントフォークを組み付けた状態で行なわれるため、フレームにはフロントフォークを含む。
これをフレームセットという。しかし近年は競技用の特殊な自転車において、フロントフォークを含まないフレームが販売されることもある。なおフロントフォークを除いた場合はフレーム体という。フレームは一般的に中空構造のパイプ(チューブとも言う)で構成されている。
フロントフォーク
前車輪を保持する部分。フロントフォークとフレーム体は転がり軸受けを介して結合される。これを中心として左右に回転することで、操舵を可能としている。
車輪
自転車の「車」たる部分。車体と乗員の重量を支えるのに充分な強度を持ち、同時に人力という脆弱な動力を無駄なく利用するために、抵抗なく滑らかに回転し、重量が軽いことが求められる。また走行の安全のために、スリップすることなく確実に路面をとらえる必要があり、快適性のために振動や衝撃を吸収することも期待される。
車輪に関しては駆動部分も兼ねているので下記の駆動部分の項目で詳述する。
接点部分
人間の身体が自転車と接触する部分はペダル、サドル、ハンドルの3点である。この3点は日本では「3つのル」と呼ばれ、特に長時間連続して走行する自転車において快適性に大きく影響する部分である。
ハンドルバー
操縦操作を行なうと共に乗員の体を支え安定させる為のハンドル。用途によってさまざまな形態がある。
サドル
人の臀部を乗せる部分で、乗り手の体重の多くをここで受け止める。
ペダル
人の脚力を自転車へと入力するための部分。同時に運転操作を行なう際の足場でもある。ペダルに関しては駆動部分も兼ねているので次項目の駆動部分でも触れる。
駆動部分
人間の筋力を推進力へと変化させる部分。外装型変速機の外観 横型パンタグラフ式 内装型14段変速機の内部構造駆動系の部品は
  • ペダル
  • クランク
  • ボトムブラケット
  • チェーン
  • スプロケット
  • ホイール
  • ハブ
  • スポーク
  • スポークニップル
  • リム
  • タイヤ
の順で動力が伝わる。 この間に、 変速機 のような動力の効率を高める装置が組み込まれる場合がある。

動力伝達部分

ペダル
最初に動力を受け、クランクへと伝える部分。競技用車両などのペダルには脚や靴をクリップ(トウクリップとトウストラップ)や専用の金具(クリート)で固定するもの(ビンディングペダル)もある。
クランク
人間の足の上下往復運動を回転運動に変化させる、フレームのボトムブラケットシェルを中心に回転する部分。クランクはボトムブラケット(BBまたはハンガーとも)という軸受けを介してフレームに接続される。
一般に車体右側のクランクには歯車が組み付けられ、ここにチェーンを掛けることで後輪に回転を伝える。この歯車は機械工学的にはスプロケットと呼ばれるものであるが、自転車においては車輪側に取り付けられるスプロケットとの混同を防ぐためにチェーンホイールと呼んで区別する。
チェーン
クランクからの動力を後輪に伝達する重要な役割をする。自転車用には19世紀末の安全型自転車になってようやく登場し、それまでは前輪の軸がクランクと直結していた。
なお、初期の自転車用チェーンはブロックチェーン (block chain) という物で、現在用いられているローラーチェーンとは構造が異なる。
スプロケット
正確に言えばクランクのチェーンホイールも含め、チェーンと噛み合う歯車全般をスプロケットと呼ぶが、上述の通り自転車では後輪ハブに取り付けられるものに限定してスプロケットと呼んでいる。チェーンで繋がったクランクからの動力を車輪に伝える役割をする。なお、英語では Cog と呼ぶこともある。
一般にスプロケットの近傍または内部にはフリーホイール機構(略称・フリー)が組み込まれており、これによって走行中に足を止めて惰性で走り続けることができる。この機構は安全型自転車の後期になって普及したもので、それ以前は走行中にペダル上で足を止めて休むことはできなかった。現在でもある種の競技用自転車にはフリーホイールを持たないものがあり、これを固定ギヤまたはフィクスド・ギヤ (Fixed Gear) などと呼び、ペダルの動きに合わせて、前転もすれば後転もする。固定ハブを使用した自転車で急にペダルの動きを止めると転倒する恐れがあるので注意を要する。
スプロケットには一つしかないもの(シングルスピード)の他、外装変速機を構成する要素として、大小のスプロケットが重ね合わさったもの(マルチスピード)がある。

後者の中でフリーホイール機構がスプロケットに一体に組み込まれているものにフラッシュフリーとボスフリーがあり、フリーホイール機構からスプロケットのみを分離、交換できるものをカセットスプロケットと呼ぶ。ハブ側にフリーホイール機構が組み込まれており、カセットスプロケットを直接組み付けることができるハブがフリーハブである。
ホイール
中心部のハブ、そこから伸びるスポーク、環状のリム、リムを固定しているニップルからなる。

前輪:フロントフォークの先端に軸が固定され、ハンドル操作により左右に舵を切る。
後輪:フレーム体後端に軸が固定され、動力を受けて推進力発生させる。

上記の役割が決まったのは安全型自転車の登場以来で、それ以前のベロシペードおよびペニー・ファージングまでは動力の駆動と操舵双方を前輪で行っていた。現在ではリカンベントの一部などにこの方式が僅かに見られる。
ハブ
内蔵された転がり軸受けを介して車軸が通されており、これを中心に滑らかに回転する。車軸はフレームおよびフロントフォークのエンド部に固定される。
ハブには前輪用、後輪用と2種類あり、細部の寸法と形状が異なるため、ごく一部の例外を除いて前後のホイールを入れ替えて使用することはできない。
スポーク
ハブとリムとつなぐ棒状のものであり、ハブ本体とリムをつなぐ役割を果たす。スポークの一端は、一般にハブのフランジ部に引っ掛ける形で固定するために曲がっており、先端は釘の頭のように潰されている。もう片一方の先端にはねじ山が切られている。
リム
正確にはホイール・リムという。車輪の円周部分。スポークに対応する数の穴が開いており、ここにスポーク・ニップルという特殊な形状のナットでスポークの端部が止められ、ハブとの位置関係が固定される。またリムがタイヤをつなぎとめる役割も果たしている。つなぎとめる方法はタイヤの種類によって変わる。
タイヤ
動力を路面に伝える部品。ここでペダルより与えられた動力は推進力となる。走行効率、快適性において非常に重要な役割を担う。
大多数の自転車用タイヤはゴムと繊維類を組み合わせた複合材料から成り、内部に圧縮された空気を充填した空気入りタイヤである。空気入りタイヤは軽量で振動が少なく、転がり抵抗の少なさと接地力(グリップ力)を併せ持つたいへん優れたタイヤであるが、パンクなどのトラブルの可能性が避けられない。
そのため様々なパンク回避技術の開発が行なわれているが、走行性能とパンク回避の完全な両立はなされていない。
変速部分
自転車のギア比を変える装置のこと。自転車には必ずしも不可欠な機能ではないが、人力という限られた動力を効率よく利用できるようになるので、長距離を高負荷で走行する目的の自転車にはほとんど取り付けられている。
また、低速でのふらつきを抑え安定性を高める効果も得られるため、短距離を低負荷で走行する目的の自転車にも装備されることがある。大まかな分類としては外装式と内装式がある。
内装変速機は一般に後輪のハブに内蔵されるものが多いため、ハブギアとも呼ばれる。遊星歯車機構の原理によりギア比を変更する。
外装式のものは特にディレーラーと呼ぶことがあるが、ディレーラーは本来、外装変速機を構成する一部分にすぎない。ただ最も象徴的な部分であるため、「ディレーラー付きイコール外装変速機付き」と認識されてきた。
ブレーキ
速度を減ずる装置で、自転車の安全性を司る極めて重要な部分である。これを前後両輪に備えない自転車は、日本の公道を走行することが法的に許されない。
その重要性ゆえに、古来より幾多の改良工夫が繰り返されており、さまざまな形式が存在する。